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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第5章 緑に睡る

…長い長い追憶から覚めた紳一郎は、白い紙を丁寧に折り畳み胸ポケットに収める。
部屋の呼び鈴を一度だけ鳴らす。
ほどなくして、執事が静かに現れる。
「車の用意をしてくれ。出かける」
「…かしこまりました。どちらの方にお出かけになりますか?」
紳一郎は全く表情を変えることなく淀みなく答える。
「…浅草だ。浅草のカフェ 浪漫…。運転手に伝えてくれ」
執事は僅かに表情を揺らがせ…しかしすぐに元の能面のような感情の読み取れない貌に戻ると一礼をし、部屋を後にした。
紳一郎は端正だが取り付くしまのない美貌を全く変えずに、胸ポケットをそっと抑える。
…まるで、唯一の大切なものの在り処を確かめるように…。
そうして窓の夕景に背を向けると、落ち着いた足取りで、書斎を出たのだった。
部屋の呼び鈴を一度だけ鳴らす。
ほどなくして、執事が静かに現れる。
「車の用意をしてくれ。出かける」
「…かしこまりました。どちらの方にお出かけになりますか?」
紳一郎は全く表情を変えることなく淀みなく答える。
「…浅草だ。浅草のカフェ 浪漫…。運転手に伝えてくれ」
執事は僅かに表情を揺らがせ…しかしすぐに元の能面のような感情の読み取れない貌に戻ると一礼をし、部屋を後にした。
紳一郎は端正だが取り付くしまのない美貌を全く変えずに、胸ポケットをそっと抑える。
…まるで、唯一の大切なものの在り処を確かめるように…。
そうして窓の夕景に背を向けると、落ち着いた足取りで、書斎を出たのだった。

