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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第5章 緑に睡る

今年のクリスマスイブも十市と過ごせる…!
紳一郎はイブの前日の夜、執事から父 公彦の伝言と1日早いクリスマスプレゼントを受け取りながら心が浮き立つのを感じた。
「…旦那様は急用がおできになったそうで明日はご帰宅になれないそうです。紳一郎様と過ごせないことをとても残念がっておられました」
そう言って手渡されたクリスマスプレゼントはモンブランの万年筆と、舶来の方位磁石だ。
予めプレゼントは何が良いのか尋ねられていたのだ。
もっとも紳一郎の希望は方位磁石だけで、モンブランの万年筆は公彦の気持ち…ということらしい。
…もちろん母親はなしのつぶてだ。
ここ数日見かけていないし、明日も明後日もクリスマスだからと言って屋敷に貌を出すような殊勝なことはしないだろう。
蘭子は広尾の屋敷以外に別宅を持っている。
そこでしたい放題の浮気を繰り返しているのだ。
紳一郎は今まで母親からクリスマスプレゼントや誕生日プレゼントを貰ったことは一度もない。
期待もしていないから何とも思わない。
父 公彦には最近、愛人が出来たらしい。
お喋りなメイド達が噂をしていたのを偶然聞きつけた。
「…旦那様の愛人は柳橋の芸者だそうよ。…なんでも売れっ子芸者で旦那様は毎日通われて落籍したとか…。
クリスマスもきっとその女のところへ行かれるんじゃないかしら…」
紳一郎はその話を聞いた時、心からほっとした。
妻には数え切れないほど愛人がいて、自分の子どもでもないのに紳一郎を養育している父…。
これくらいの仕返しは当然なのだ。
父が愛人を作ったからと言って、母は痛くも痒くもないだろう。
紳一郎はご機嫌だった。
父のいないクリスマス…。
十市と堂々と過ごせる。
イブにゆっくりと、十市と二人きりで過ごせる!
紳一郎は歌いだしたいくらいに幸せだった。
…僕には十市さえいれば幸せなんだ。
他には誰もいらない。
十市とずっと一緒にいたい。
これからもずっと僕といて…。
それをイブに伝えよう…。
紳一郎は、窓の外に降りしきる雪を見ながら、わくわくと胸を高鳴らせていた。
紳一郎はイブの前日の夜、執事から父 公彦の伝言と1日早いクリスマスプレゼントを受け取りながら心が浮き立つのを感じた。
「…旦那様は急用がおできになったそうで明日はご帰宅になれないそうです。紳一郎様と過ごせないことをとても残念がっておられました」
そう言って手渡されたクリスマスプレゼントはモンブランの万年筆と、舶来の方位磁石だ。
予めプレゼントは何が良いのか尋ねられていたのだ。
もっとも紳一郎の希望は方位磁石だけで、モンブランの万年筆は公彦の気持ち…ということらしい。
…もちろん母親はなしのつぶてだ。
ここ数日見かけていないし、明日も明後日もクリスマスだからと言って屋敷に貌を出すような殊勝なことはしないだろう。
蘭子は広尾の屋敷以外に別宅を持っている。
そこでしたい放題の浮気を繰り返しているのだ。
紳一郎は今まで母親からクリスマスプレゼントや誕生日プレゼントを貰ったことは一度もない。
期待もしていないから何とも思わない。
父 公彦には最近、愛人が出来たらしい。
お喋りなメイド達が噂をしていたのを偶然聞きつけた。
「…旦那様の愛人は柳橋の芸者だそうよ。…なんでも売れっ子芸者で旦那様は毎日通われて落籍したとか…。
クリスマスもきっとその女のところへ行かれるんじゃないかしら…」
紳一郎はその話を聞いた時、心からほっとした。
妻には数え切れないほど愛人がいて、自分の子どもでもないのに紳一郎を養育している父…。
これくらいの仕返しは当然なのだ。
父が愛人を作ったからと言って、母は痛くも痒くもないだろう。
紳一郎はご機嫌だった。
父のいないクリスマス…。
十市と堂々と過ごせる。
イブにゆっくりと、十市と二人きりで過ごせる!
紳一郎は歌いだしたいくらいに幸せだった。
…僕には十市さえいれば幸せなんだ。
他には誰もいらない。
十市とずっと一緒にいたい。
これからもずっと僕といて…。
それをイブに伝えよう…。
紳一郎は、窓の外に降りしきる雪を見ながら、わくわくと胸を高鳴らせていた。

