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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第5章 緑に睡る
普段、感情を露わにしたことがない紳一郎が不意に立ち上がり、父親に反論したことを公彦はもちろんのこと、給仕をしていた下僕達も驚きに一瞬たじろいだ。

「…紳一郎、落ち着きなさい…」
宥めるために公彦が優しく声を掛ける。
紳一郎は冷たいほどに整った美しい貌をやや紅潮させながら公彦に畳み掛ける。
「僕は成績も学年トップです」
「そうだね。素晴らしいよ」
「友達付き合いもきちんとこなしています。クラブだってサボったりしていません。父様が出席しろと言われたお茶会や昼食会も欠かさず出ています」
「そう…。お前はなんでもそつなくこなす優れた子だ」
「だから、十市と親しくしてどこが悪いんですか⁈仕事の後に喋ったり、勉強を教えているだけです。それなのに、なぜ駄目だと仰るのですか⁈」

テーブルクロスに覆われたテーブルが一度だけ大きく叩かれた。
「駄目なものは駄目なのだ‼︎」
公彦が鋭く叫んだ。

紳一郎ははっと息を飲んだ。
食堂が水を打ったように静まり返る。
下僕もメイドも…執事すらも公彦を息を詰めて見つめた。

直ぐに公彦は我に帰り、声色を改め紳一郎に弱々しく詫びた。
「怒鳴ったりしてすまない。…どうかしていた。…許してくれ…紳一郎…」
公彦は端正な親指と中指でこめかみを抑え、苦しげに息を吐く。
そして、もう紳一郎の貌を見ることはなく俯き加減に懇願するように言った。
「…十市とこれ以上親しくなるのはやめなさい。彼が悪いというのではない。…お前の為にならないからだ…」
「…父様…」

公彦は常に冷静で、決して声を荒げたりなどしない人間だ。
公家という生まれのせいか、職業柄のせいかは分からないが、彼はいつも古典的な男雛のような貌に淡々とした表情を浮かべているような男だった。
…父様が怒鳴るなんて…。
初めて見た父親の激昂した様子に紳一郎は、それ以上はもう何も言えずに、ただ押し黙るしかなかった。



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