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遠い日の約束。
第13章 混在する記憶

───…
ここは…お寺…
最初に見たお寺だと気がついた。
あれから美弥がどうなったのか気になっていた。
宝賀に犯され、南和に心を傷つけられ大丈夫なのかと心配だった。
境内を歩き、今度は何を見せられるのかとドキドキする。
もう辛いことは見たくはなかった。
そう思う私の目に飛び込んできたのは縁側に座り込んでいる美弥だった。
近づいても反応を示さない。
見えていないのは分かっていても寂しく思えた。
しばらく美弥の傍に座って同じ風景を眺めていた。
幼い頃の美弥と麻耶を思い出す。
倒れて泣き出した小さき女の子たち。
この場所で色々なことが起こったのを私はもう気がついている。
これから起こるであることも…なんとなく分かっていた…
そして、私が美弥の記憶を辿っている理由も…分かりはじめていた…
『美弥…寒いから部屋に入ろうか』
帰ってきたいた葉月が美弥に声をかけた。
だけど、その声に答えることはなかった。
美弥の瞳は何も見ず、何も感じてはいなかった。
それは美弥が選んだ防衛反応。
自分の心を守るために閉ざした心だった。
『こんなに冷たくなって…風邪引くよ』
部屋に連れて行った葉月は、火鉢の前で美弥の手に息を吹きかけながら優しく告げた。
聞こえてなくても葉月は寄り添っていた。
その思いが伝わって欲しいと思う。
こんなに愛されているのだと、心を開放して葉月の愛を受け入れてほしかった。
だけど、私の言葉も美弥には届かない。
ゆらりと視界が揺れた。

