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遠い日の約束。
第13章 混在する記憶

───…
うつろな目をして空を見上げていた。
着崩した着物が痛々しい。
葉月の心を知ろうともせずに逃げ出した美弥は何を思うのか…
『今日は外か…』
後ろから声が聞こえ振り返ってみれば、そこには宝賀が立っていた。
その宝賀に視線を向けて、力なく笑う。
『天気よかったから』
『そうか…』
宝賀は感情のないまま告げると、美弥の膝枕で空を見上げていた。
美弥にひどいことをしたのに、優しい宝賀…
そして、寂しい心を埋めるために縋る美弥…
今、この時だけでも心が休まればそれでいい。
『帰りたいか?』
宝賀の言葉に美弥は静かに首を横に降った。
帰りたくないわけじゃない。
葉月と共に生きていけるのなら、今からでもその手を取りたい。
だけど…怖い…
また私より麻耶を取るかもしれない現実が怖くて…私は帰れない…
『お前も…もう少し我侭に生きられたら…もっと楽に生きられたかもしれないな』
そうだね。
言いたい事を口にできてたら、あんな悲劇は起こらなかった。

