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遠い日の約束。
第13章 混在する記憶

───…
『放っておけないって何?守ってあげたいって何?私に心がないって思ってる?傷つかないって思ってる?葉月が麻耶と結婚するって、麻耶が身籠ったって知ったときの気持ち分かる?私がどんな思いで二人を許したか分かる?何も感じずに簡単に葉月を忘れたと思ってるの?』
どこからともなく美弥の怒りに満ちた寂しい声が聞こえてきた。
家の周りをぐるっと回って離れの方に足を向ければ葉月と美弥が対峙している。
『諦めかけていた心を引き戻して、期待を持たせて…また麻耶が我儘言い出したら私を捨てるの?また簡単に切り捨てるの?…ねぇ葉月…なんで私を選んでくれないの?なんで全てを捨てて私を選んでくれないの?』
美弥の嘆きの声と共に流れ込んでくる感情に、知らず知らずに涙が流れていく。
今まで我慢していた思いが爆発して、傷つけたくないのに言わずにいられない思いが、私の記憶を呼び起こす。
『ごめん…そんなつもりじゃなかった…』
葉月の瞳から涙が溢れ流れる。
それが葉月の心なのに、今の私には分からない。
『そんなつもりないって…だったらどんなつもり?…葉月に出会わなければよかった…好きにならなければよかった…なんで、葉月が泣くの?ねぇ…なんで葉月が泣くのよ』
葉月は何も言わない。
涙を流しながら、私の思いを全て受け止めてくれる。
だけど、その心が私には分からない。
『なんで何も言わないの?もう…興味もないの?』
だから私は…言ってはいけない言葉を口にする。
『……い…』
『何?』
『葉月なんて…』
ダメ!!
その言葉を言ったら、後悔する…
『大嫌い!!!』
「だめ――――」

