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遠い日の約束。
第13章 混在する記憶
そんな記憶は私にはない。
高宮くんとそういうことをしようとした記憶なんてない





……


………

記憶に…ない?
本当に?
記憶にないと断言できる自分がいないのはなぜ?
俊樹は言った。
ふたりで飲みに行って酔っ払って媚薬を飲ませたと。
だけど、ふたりで飲みに行った記憶はない…
なぜ?

「あっ…」

断片的に蘇る記憶。
私が封印していた…いや…俊樹が封印してくれた記憶が蘇ろうとする。
私が私に警鐘を鳴らす。
それを思い出してはいけないと、その扉を開くなと私が私に暗示をかける。

「あっ…あああああっ」

だけど、一度蘇りだした記憶を押しとどめることはできなかった。
あふれ出す、嫌な記憶。
高宮くんにだまされ、媚薬を飲まされて淫らになっていく自分自身を思い出す。
タクシーの中で春馬を求め、家に帰れば俊樹を求めた。
そして、私の記憶を塗り替えてくれた俊樹。
そんな優しい彼を私は裏切ろうとした。

「わっ…私…あっ…あああっ――――」

「華??華!!」

高宮くんが私の名前を呼ぶ声が遠くで聞こえた。
だけどその声が私を呼び止めることなどできない。
全てを思い出した私は、辛い思いから逃げるかのように意識を手放した。
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