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月光の誘惑《番外編》
第3章 月に臨み、月を望む。

「……大丈夫だった?」
え。
目を開けたあかりが、俺を見つめている。唇が微笑んでいる。
「患者さん、助かった?」
「え、あ、うん、助けられたよ」
「良かった」
血の臭いでもしただろうか。俺が気づかなかっただけで、何か。
「先生、ご飯食べた?」
「あ……忘れてた。お腹空いた、かも」
「おにぎり、食べる?」
「食べたい」
あかりが起き上がる。バスローブ姿が――大変、色っぽい。
おにぎりも食べたいけど、あかりも食べたい。そんなバカなことを考える。考えてしまう。
「買ってきてあったの?」
「ううん、作ってきた。お腹空くといけないから」
隣のベッドに座り、あかりがカバンから袋を取り出しているのを見つめる。
手渡されたのは、アルミホイルに包まれた三角おにぎり。鮭とシラスが混ざっているようだ。ペットボトルのお茶までサイドボードに置いてくれる。
至れり尽くせりかよ。何なの、この天使。
「じゃあ、いただきます」
「召し上がれ」
何の変哲もないおにぎりなのに、何でこんなに美味しいのか。お腹が空いているから? あかりが作ってくれたから? とにかく一気に食べてしまう。

