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月光の誘惑《番外編》
第1章 月下の桜(一)

「天ぷらも美味しい! 抹茶塩は初めて!」
「案外イイでしょ?」
「案外どころか! すごく好きかも」

 和食が、魚介類が、好きで良かった。
 俺、和食が好きなのに、由加はいつもイタリアンやフレンチばかりをリクエストしてきたから、胃が疲れていたんだよな。
 食の好みは大事。笑顔が見られることは大事なのだ。

「明太子の揚げ春巻き……!」
「それも好き?」
「好き!」

 でも、そろそろお腹いっぱい、とあかりさんは苦笑する。確かに少食のようだ。残ったものは俺が全部食べるから、いいけど。

「あかりさんはクリスマスイブは予定ある?」
「えーと、木曜日? 木曜日はなかったかなぁ。クリスマスも仕事だし」

 早速カレンダーを起動して曜日を確認している。
 ホテルのスイート、キャンセルしなくても良さそうだ。他のカップルに恵んでやるくらいなら、俺たちが使いたい。

「じゃあ、予定入れておいて。俺と過ごしてよ」
「いいよ。プレゼントはどうする? 買ってきたほうがいい? あ、でも、そういうのはないほうがいいかな?」
「あかりさんがいい」

 あかりさんの箸が止まる。聞こえなかった? まぁ、そんなわけないか。もう一度、言おう。

「あかりさんが欲しい」

 ぼん、と音が出そうなくらいに一気に赤面したあかりさんがかわいい。
 箸を置いて、頬をペタペタ触っている。そんなことで、真っ赤になった顔が戻るわけじゃないのに。

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