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サキュバスちゃんの純情《長編》
第2章 週末の終末

『暑いし、鍋はいいや。来週の土曜は予定あけておくよ』

 怖くなった。
 立て続けにセフレを失うのは、怖い。特別なことなんて必要ない。ただ、いつも通り、が欲しい。いつも通り、でいい。いつも通りホテルで会いたい。

『わかった。じゃあカニはなしで。今から帰るけど、ランチどう?』

 さっき宮野さんに出してもらったから、お腹はいっぱいだ。今すぐ先生に会う理由はない。
 というか、北海道ってそんなに近いんだ? そんな距離感にびっくりしてしまう。

『来週末まで会いたい気持ちは取っておくね。気をつけて』

 結構体はしんどいから、今から先生に抱かれたら大変なことになりそうだ。来週まで我慢、我慢。

『残念。また連絡するよ』

 バウムクーヘンを食べ終えて、ひと息。バウムクーヘンは甘すぎないものが好きだ。さすがにチェーン店のカフェにケーキは置いていなくて、仕方なくチョイスしたけど、これは正解だった。美味しかった。
 抹茶ラテに口をつけて、ブレンドをここで飲むか、帰りながら飲むか、どちらにしようか悩む。
 というか、今日は何をしよう。何も考えていなかった。

 ヴヴヴ、とスマートフォンが鳴る。私のものではなく、隣の人のものだ。
 カウンターに置かれた青いスマートフォンを、無骨な指がすくい上げる。窓ガラスに光が反射して顔が見えなかったけど、隣は男性のようだ。そして、メッセージを確認したあとに彼から溜め息がこぼれた。

「夏にカニはないだろ」

 あー、同じことを数分前に思いました。やっぱり鍋はないと思います。北海道土産なら、バターサンドやロイスの生チョコなんかが無難で良いと思います。

「月野さんはチョコ好きでしょう?」
「あ、はい」
「じゃあ、ロイスの生チョコ、と。空港でも買えるだろ」

 抹茶ラテを飲む。
 うん、ロイスの生チョコがいいですね。
 ……え? 誰?
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