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サキュバスちゃんの純情《長編》
第2章 週末の終末

 AVは偽物の精液を使うし、風俗店は本番行為が禁止されている。
 今の世の中、新鮮な精液を手に入れる手段が限られてきている。昔みたいに、立っているだけで男が寄ってきた時代ではない。
 サキュバスにとって、性に奔放な日本は居心地がいい場所ではあるけれど、選択肢はそう多くないのが困るところだ。
 昔が良かった、なんて思ってしまうあたり、私も歳を取りすぎた。

 ヴヴ、とスマートフォンのバイブが鳴る。見てみると、湯川先生からメッセージが届いている。

『カニ、買って帰る?』

 市場らしき風景と、足が揃えられたカニの写真。湯川先生の指が一緒に写っているけど、カニはかなり大きい。
 ……鍋の季節ではないし、どう料理すればいいのか迷うものをお土産でもらうのはどうかと思う。

『おはよう。やっぱりカニはいらない』
『美味しそうだよ。来週末は鍋でもしようか?』

 来週末は会えるんだとホッとする。でも、鍋かぁ。そろそろ梅雨も明ける時期に鍋……そもそも、どこで? ホテルに鍋と具材を持ち込むの? それは難しいのでは?

『鍋ってどこでやるの?』
『俺の部屋じゃダメ?』

 先生の部屋? 家? 鍋は夕飯? え、泊まるの?
 疑問符だらけ浮かんでくる。でも、私が考えていることは間違ってはいないはずだ。

『土曜の夜に鍋をして、泊まっていく?』

 嫌な流れだな。それが正直な感想だ。
 宮野さんと同じパターンだ。いつもホテルで会っていたのに、最後だけ、部屋に呼ばれた。
 最後だけ。
 ……先生も、最後? 北海道で何かあった? 偉い人からお見合いでも勧められた?

 先生も、私から離れていくの?
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