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サキュバスちゃんの純情《長編》
第2章 週末の終末

「……ん」

 目を開けたら、好きで好きでたまらない人の寝顔があればいいのに。残念ながら、好きではあるけれど、今日別れる人の寝顔である。

 宮野さんはぐっすり眠っている。私が起き上がっても目が覚めないくらいの深い眠りだ。
 それも仕方ない。宮野さんが何度も私を抱くから、いつの間にか夜になり、私の腰は砕ける寸前だ。今も下腹部が痛い。ちょっとヤリすぎた。

 リビングのソファで、宮野さんの願い通り何度も抱き合った。
 勃ったら挿れる、だなんてセックスはあまりしたことがない。宮野さんは果てなくてもただ挿入っていたい、そういう気持ちだったようだ。
 挿入るなら精液を出して欲しい私には理解しがたい感情と行動だ。

 昨夜は抱き潰されてぐったりしたまま、宮野さんお手製のカルボナーラを食べて、シャワーを浴びながら一回、ベッドで一回ヤッてから寝てしまったようだ。もうお腹いっぱいだ。

 宮野さんから借りたシャツに手を通し、音を立てないように部屋を出る。
 リビングのテーブルの上に、宮野さんのスマートフォンを見つける。ロックは数字で解除するタイプ。
 一、一、二、五、と入力するとロックが解除される。十一月二十五日は、宮野さんと私が出会った日。彼が死のうとした日だ。

 電話帳から私の名前を探す。「月野あかり」は難なく見つかった。真面目な宮野さんは、変なニックネームなんかで名前は登録していなかった。助かった。
 月野あかりの連絡先を迷うことなく消去する。ついでに、アプリの連絡先も履歴も。
 これで、連絡は取れなくなるはずだ。

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