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サキュバスちゃんの純情《長編》
第2章 週末の終末

え。
宮野さんの声が、目が、心配そうに「ダメかな?」と聞いてくる。
宮野さんとはいつもラブホテルで抱き合っていた。それは、私みたいなセフレを部屋に入れたくないからだと思っていた。銀行員という堅い職業と、真面目な性格から、勝手にそう思っていた。
宮野さんは、私にキスマークがついていても何も言わない、どんな服装でも褒めたりはしない、私には無関心な人だと思っていた。
もしかして、違う?
もしかして、さっきの「好き」も?
「このソファは新居のリビングには置かない。俺の部屋に置くんだ。あかりと抱き合ったことを思い出せるものが欲しい。そしたら、どんなことがあっても生きていける気がするんだ」
宮野さんにとって私とのセックスは、死から救ってくれた行為に他ならず、つまりは、生きるための糧だったのだ。私とは違う意味での、糧。
宮野さんは目を細めて、笑う。苦しそうに。切なそうに。
「あかり。本当は、君を独占したかった。本当は、他の男に抱かれて欲しくなかった」
「……」
「でも、そんなこと言ったら、あかりは離れてしまうから、言えなかっただけなんだ。俺は醜い男だよ。君を忘れなきゃいけないのに、君との思い出を刻みたいと思ってしまった」
苦しそうに顔を歪めて、私への愛の言葉を降らせてくれる彼を、醜い男だなんて、思えない。ただの、愛しい男だ。
「……潤」
「うん」
「好きなようにしていい、って言ったよ、私」
「……うん」
「明日まで、潤の好きなように――」
震える宮野さんの体を抱きしめる。そんなことで彼の不安は払拭できないと思うけど、構わない。かわいい男を抱きしめたいと思ったのだから、そうするだけだ。
「――私を抱いて」
宮野さんがそれで生きていけるなら、気がすむまで、好きなように、私を抱けばいい。
頑張って、付き合うよ。

