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サキュバスちゃんの純情《長編》
第8章 兄弟の提携

「あかり、手伝うことある?」
「食器出してくれると助かるかな」
「翔吾ったら、私が台所に立っていても手伝うことなんてなかったのに、優しいのねぇ」
「……母さんはあんまりご飯作ってなかっただろ」
「まぁ、ねー」
お母様の悪びれることのない笑顔に、翔吾くんが苦笑する。
あぁ、だから、和食なのか。だから、和食が好きなのか。翔吾くんは、母親の味に飢えているのかもしれない。
「あ、だし巻き。俺、多めにもらっていい?」
「いいよ。私のお皿から持っていって」
「やったー」
翔吾くんは嬉しそうに盛り付けている。ウキウキしている彼を見るのは、好きだ。
翔吾くんにテーブルに配膳してもらっている間、両親は今後の予定を確認している。二人の仲は良さそうだ。
「はい、できたよ」
翔吾くんの号令に素早く従ったのは、お母様だ。椅子に座って、早くも手を合わせている。
目、めちゃくちゃキラキラしているんだけど。同じような目を、さっき見た。親子なんだなぁと笑みが零れる。
「わぁ、美味しそう! あんな短時間でこれだけできちゃうの? すごいわねぇ、あかりちゃん!」
「昨日から準備してあったものもあるので」
「ほんとだ、美味しそう」
「美味しいよ。すぐわかるよ」
翔吾くん、あまりハードル上げないでくれるとありがたいなぁ。
私が着席してから、桜井家の人々とのお昼ご飯が始まったのだけれど……お母様が翔吾くん以上に絶賛してくれるので、私はとても恥ずかしい。ありがたいんだけど、恥ずかしい。
「豚汁美味しい! だし巻き美味しい! 鯛も美味しい! だし巻きなんて、料亭の味みたい!」
料亭仕込みの味、ではありますね。と言うのも恥ずかしいので、私は照れながら箸を進めるだけだ。
「あかりちゃん、いい奥さんになれるわよー!」
「あ、うん、そのつもり」
「んぐ」
翔吾くんがサラリと肯定するので、私はサラダを吹き出してしまいそうになった。お母様にコーンが命中するところだった。危ない、危ない。

