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サキュバスちゃんの純情《長編》
第8章 兄弟の提携

翔吾くんの目が見開かれる。驚きの表情のまま、私を見下ろす。指も手も止まる。
さっきと同じ。完全に固まっている。
私の心臓はバクバクしている。かつてないほどの動悸だ。胸が痛い。
けれど。
「――それを知って、どうするつもり? 俺と別れるの? それとも、付き合ってくれるの?」
翔吾くんの声は驚くほど冷静で、冷たい。視線も冷ややかだ。
あ、しまった、と思ったけれど、すべては後の祭り。口に出してしまったものは、飲み込めない。覆水は盆には返らない。
「別れもしないし、付き合いもしないんだけど……ただ、知りたくて」
「それは卑怯だよ、あかり」
「やっぱり、卑怯、だよね……ごめん」
「うん、卑怯。それを俺に聞くなら、別れるか付き合うかのどちらかを覚悟してくれなきゃ、教えてあげられない」
「……ごめんなさい」
水森さんに煽られて、私は本当に馬鹿なことを翔吾くんに聞いてしまった。呆れたし、怒っただろう。
けれど、翔吾くんは優しいから、それを私にぶつけることはない。それが、つらい。
ゴロリと横になって、翔吾くんは天井を見上げる。その隣で腕枕をしてもらいながら、スイッチがオフになったことを目視で確認する。
……ごめん、萎えさせちゃった。

