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サキュバスちゃんの純情《長編》
第5章 恋よ来い

 しかし、前回とは全く反応が違う。
 顔を真っ赤にして、私を見ないようにしている。前回のは虚勢。こっちが童貞くんの正しい反応ではないかと思う。
 それにしても、漫画みたいに悲鳴をあげて逃げ出しても良かったのに。健吾くんは突っ立っているだけだ。

「目、覚めた?」
「……覚めた」
「勃った?」
「たっ……!?」

 翔吾くんがからかいたくなる気持ちもわかる。素直な健吾くんは、反応が良い。そして、それがとても、かわいい。

「昨日の残りがあるから、朝ご飯食べてね」
「……食べないのか?」
「今日はデートなの。早く帰って準備しなくちゃ」

 ブラは翔吾くんの部屋に置いてきてしまったみたい。Tシャツに再度手を通して、「ふわ」とあくびをする。バスタオルは、カゴにポイ。

「……翔吾と?」
「違う人。報告書の中にはいないよ」
「は? あんた、その男のこと――」

 荒木さんのこと?
 健吾くんが、怒っている。
 また、あれか。翔吾くんより好きなのか? って聞かれるのだろうか。それは非常に難しい問いだ。

「――本気なのか?」

 一瞬、思考が止まった。
 それは、その問いは、予想外だった。

「本気……?」

 荒木さんのことは、確かに好きだ。好きだけど、日向さんみたいに積極的にアプローチはできないし、何らかの奇跡が起こって付き合えたとしても、淡白な彼に毎週セックスをねだることもできない。
 その程度の「好き」は、「本気」なのだろうか。本気なら、「セックスが好きじゃないなら、私の体に溺れさせてあげる」くらいの気持ちがあってもいいと思う。

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