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サキュバスちゃんの純情《長編》
第5章 恋よ来い

 早朝。ぐっすり眠る翔吾くんのベッドから抜け出して、浴室へ向かう。下着もちゃんと持っていく。
 脱衣所の鏡で首筋を確認して絶望する。真っ赤どころか、青くなってますけど!? 絆創膏で隠れるといいんだけどなぁ、これ。
 翔吾くんには今度からキスマーク禁止令でも出そうかな。

 温めのシャワーを浴びながら、今日の予定を確認する。
 朝、吉祥寺の喫茶店で荒木さんとレアチーズケーキを食べて、昼はどうする? さすがにランチまでは一緒に食べられない気がする。その判断は荒木さんに任せよう。

 荒木さんとわかれたあとは、浴衣を買いに行かなくちゃ。花火大会のドレスコードは、浴衣。もちろん、持っていない。
 今は呉服屋さんへ行かなくても、ショッピングセンターや百貨店などですぐ手に入る。帯や下駄までセットになっているものも多い。腰紐や前板も売っているだろう。
 一度くらいしか使わないなら、安いもので十分だ。あ、髪飾りと巾着も買わないとなぁ。

 脱衣所へ出て、バスタオルで体を拭く。相変わらず、水をよく吸ってくれるタオルだ。
 さて、ショーツはどこだ? どこにおいた?
 キョロキョロとあたりを見回し、洗面台の近くに落ちているのを見つける。床の色とよく似ていたから見つけづらいなぁ、なんて思いながら、ショーツに片足を突っ込んだところで、ガチャリと脱衣所のドアが開いた。

「……!?」
「あ、健吾くん、おはよー」

 パステルピンクのショーツを引き上げて、笑顔で挨拶。現れた健吾くんは、寝不足なのか、頭はぐしゃぐしゃで、顔色が悪い。顔でも洗いに来たのだろう。目を見開いたまま、硬直して私を見つめている。

「毎日暑くて嫌になるよねぇ」
「……あのさ」
「うん?」

 健吾くんは口元を押さえて、視線を私から外しながら、指摘した。

「……見えてる」
「何が?」
「む、むね!」
「あ、ごめん。見たくなかった?」

 バスタオルを肩にかけて、胸を隠してみる。別に見られても構わない。健吾くんには下も見られているのだから。

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