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サキュバスちゃんの純情《長編》
第4章 過日の果実

「先生は、お父様を超えたいんじゃないよね。超えるんじゃなくて、一緒に歩きたいんじゃない?」
「……あかり」
「お父様と同じ歳になって、そこから一緒に人生を歩いていきたいんだよね。だから、四十五歳になったときに、お父様に恥じない自分でありたい、そう願っているんだよね?」
太腿が軽くなり、熱が逃げていく。
湯川先生は起き上がり、私を見つめる。目が潤んでいるのに、気づかないふりはできない。
「あかり」
「はい」
「俺と結婚して欲しい」
「しません」
「じゃあ、今すぐあかりを抱きたい」
「ん、いいよ」
なんで結婚してくれないの、俺のどこがいけないの、と縋ってくる人じゃなくて良かった。
本当に、良かった。
先生が、自分の希望を押し付けて、私を束縛するような人なら、別れなければならないけど、そうではない。
彼は私を独占したがってはいるけれど、それを実行しようとはしていない。
諦めているのだ。
先生は薄々気づいていたはずだ。プロポーズをしても断られると。
だから、すぐに願いを切り替えた。

