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サキュバスちゃんの純情《長編》
第4章 過日の果実

「仲がよろしいんですね。こちら、穴子の炊き込みご飯とお吸い物です。デザートをあとでお持ちいたしますね」

 仲居さんには仲の良いカップルにしか見えないみたいだ。まぁ、夫婦でも愛人でも、何でもいいけど。

 穴子の炊き込みご飯はあっさりしていて美味しい。聞くと、ちょうど旬なのだそうだ。

「明日はどちらにお出かけなさるんですか?」
「妻へのサプライズなので内緒です」
「あらあら、それは失礼いたしました。では、ごゆっくり」

 湯川先生も、サラリと嘘をつくなぁ。苦笑してから、メロンを頬張る。うー、甘酸っぱい! 美味しい! 甘いものが苦手な先生の皿もいただきます!

「美味しいね」
「うん!」
「あかりともっと美味しいものを食べに行きたいね」
「是非!」

 食べ終わって、仲居さんたちに器を片付けてもらった。

 部屋が静かになると、先生が私の膝に頭を乗せてきた。膝枕をしながら、短い髪を撫でる。
 甘えてくる男は好きだ。甘えられすぎるとダメだけど。これくらいなら、好ましい。

「ねぇ、あかり」
「うん?」
「……あかりは、他の男と別れないの?」
「一人別れたよ。結婚が決まったからって」

 湯川先生は、たぶん、他の男と別れて欲しいんだろう。そして、私を独占したいのだ。

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