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サキュバスちゃんの純情《長編》
第4章 過日の果実

駅前でタクシーに乗って、旅館へ向かう三時少し前。先生は旅館に電話をして、到着時間が早くなることを伝えている。どうやら、五時くらいを予定していたようだ。
固く握られた手は、熱いままだ。
小ぢんまりとした旅館は、全客室が十部屋しかないらしい。けれど、外観は古すぎず綺麗で、赤い絨毯が敷かれていたり、革張りのソファがあったりして、内装は少しモダンな色合いの旅館だ。コンセプト通り、和室と和洋室があるらしい。
湯川先生がチェックインをすませて、荷物を持った仲居さんに部屋まで案内してもらう。非常口などを確認しながらも、手の甲を指でなぞってみたりして、お互いの欲を伝え合う。
「わぁ……すごい」
部屋は和モダンな雰囲気で、和室の奥にフローリングの寝室がある。マットレスは低めで、布団を敷いているのと変わらない状態だ。
脱衣所の奥はトイレと外へ続く木の引き戸。カラリと引いて開けてみると、黒い石の大きな浴槽が目に入った。絶え間なく湯が流れ込む音が聞こえる。浴槽の向こうに、風で揺れる木の緑が見える。
……すごい。
「気に入った?」
「気に入った!」
振り向いた瞬間に、乱暴に抱き寄せられ、荒々しく口づけをされる。
「せんせ、仲居さんがっ」
「もういないよ。一通り話して、退散してもらったから」
「せんせ、ベッドにっ」
「ん、我慢できない」
キスをされたまま、壁に押し付けられる。
お互いの舌を、熱を求め合いながら、その熱に浮かされそうになる。

