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Oshizuki Building Side Story
第6章 Flapping to the future!

「あたしに触れなかったのは……」
あたしは疑問を続けた。
すると朱羽は言いにくそうに、だけどあたしを見て言った。
「婚約しているというから、俺……酒の力を借りて、色々と2人に聞いたりして。結婚したいと相手が思えないのは、愛情が過剰か、不足かと言われて。で、抱きすぎも度を超えると無節操で誠意が見えないかもしれないと言われてさ。だからせめて、仕事が終わるまで禁欲しようとしていたんだ」
「だったら今日、あたしに話があるというのは……」
朱羽はあたしをぎゅっと抱きしめ、耳元で囁く。
「結婚しないでいるの、もう限界だから、具体的に進めたいっていうつもりだった」
「え……」
それは予想外の言葉だった。
「贅沢言えば、アムネシアの新CMで、もし喜多見響と組むことがあるのなら、あなたも彼を見るだろうから、その時は俺の妻ということで、貴方が彼に靡かない枷にもしたかった」
朱羽の声が震えている。
「あなたが他の男に向いている時間も思いも気にくわないほど、俺はあなたに夢中だ。不安なのはいつも俺の方だ。いつ、あなたに飽きられるかと」
「飽きられるのは、あたしの方で……」
「馬鹿言うなよ。簡単に飽きるコトが出来るような恋じゃないんだよ、もっと真剣に考えてよ、俺の気持ち」
「……ごめん」
簡単に言えば、あたしの早とちりだった。
もっと朱羽を信じて、きちんとよく話をして、勝手に不安にならなければよかっただけのこと。
それを、指輪まで置いて別れ話にしてしまったのは、あたしなのだ。
ようやく見えた真実。
自分の馬鹿さ加減に、頭がぐらぐらする。

