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Oshizuki Building Side Story
第6章 Flapping to the future!

「でもごめんは俺の方だ。あなたが不安になっていることを、あなたが言い出せないような状況であることに、俺は気づいてなかったんだから」
「違、それは……っ」
「あなたを理解していた気で、理解していなかったことが悔しい……っ!」
あたしの愚かさも自己責任にしてしまう朱羽。
そうだ、彼はストイックなまでに誠実に愛してくれていたのに。
それなのに、あたしは――。
「きちんと話さないでいたことは本当に悪いと思っている。もうしないから、もう一度俺を信じて」
泣きそうなその声に胸が絞られる。
「頼むから、俺の元に返ってきて欲しい。俺は、あなたのいない日々は考えられない」
ようやくあたしは……、朱羽の背中におずおずと手を回した。
「俺には、あなたしかいらない」
……あたしもそうだ。
「疑ってごめんね、朱羽。ちゃんと2人で話し合うべきだった。2人で進んでいこうと誓ったのに。あたしの方こそごめんなさい」
あたしは朱羽の背中に回した手に、ぎゅっと力を込めた。
「あたしも、朱羽だけしかいらない」
朱羽の言葉が偽りに聞こえるほど、あたしは腐ってはいないつもりだ。
「朱羽が好き。別れたくない」
「本当に?」
朱羽がじとりとあたしを見る。
「うん、本当」
「また、指輪してくれる?」
「勿論、させて下さい」
ふわりと朱羽は笑う。
誰もが魅了されるその美しい笑みで、彼はあたしに口づけた。
パチパチパチ。
唇が重なった途端に拍手がして、歓声と口笛と共に盛大な拍手の波が襲ってくる。
その中には朱羽に似たバーテンもいた。
あ……。
ここ、街の中ということを忘れていた。
そして――すべて、見られていた。
見上げると朱羽も苦笑していた。
そして目が合うと、あたし達は爆笑しながら皆に頭を下げて、手を繋いで……走ったのだった。
ああ、バカップル。
それでも、必死だったから、多めに見て欲しい。

