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こじらせてません
第2章 馴致
必要な切片だけを見せられているに他ならなかった。

今、アキラの切片が必要になったので、ミサはメッセージを送った。

(はやく……)

あまり離席はしていられない。
呻き声もさることながら、トイレの使用時間も無用の誤解を生みかねない。

だが、既読にならない。

フィクションにおける切片は、主人公自らが他の登場人物へ話しかけたり、話しかけられたり、あるいは胸の内で思念したり、またあるいは主人公の知らぬところで誰かと誰かが話したり、思念したりして提示される。さらには登場人物の誰でもない、ナレーションに代表されるような、個別具体的ではない何者かによっても、それは行われる。登場人物は言葉を発せず、走ったり、泣いたり、悶えたりする。ガッツポーズをすれば、おうおうにして喜んでいるのであり、眉間に手を添えていれば、頭痛の発端が見出せないなら、呆れている。またさらには、夜空に浮かぶ月が描かれているのみのコマがあれば、「夜だ」ということだ。以降のコマは始終部屋の中で、窓の向こうが一切描かれていなくても、外は夜なのである。

そうやって、何者かが、身体言語の意味や外の様子を、ナレートしている。

ただし、様々な手段が用いられ、つねに視点が混然一体となって提示される切片は、甚だ一方的である点では共通であり、読んでいるミサには一切の介入は許されなかった。

切片に対していかなる快不快があろうとも、本を閉じるまでは、棒立ちでこれを聞き続けるしかない。

どちらかだけを享受することはできない。それが嫌ならば、本を閉じるしかない。

アキラの切片はまだ飛んでこなかった。

それどころか、ミサの送った切片を、気づいたかどうかすらも、提示してくれていなかった。

今のミサにとって本に相当するのはスマホであったが、閉じることはできなかった。

ゆるゆると指を動かしていたが、時間的に厳しくなってきた。
ゆるゆるとしていても、登山は続いていた。山頂は間近だった。

(……アキラくんの、せいだ)

みたび言いがかって、もう最後のアタックをかましてしまおうと、洗浄音ボタンと、念のため実洗浄ボタンを連打しようとした、そのとき、

「あー、そういえばさー」

と、仕切りの向こうから声が聞こえてきた。
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