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こじらせてません
第2章 馴致
使用中の個室どうしで喋るということは、ありえないことではないが、可能性が低い。

自分に話しかけられたわけではなく、洗面台の前で誰かと誰かが話していると見るのが穏当だった。

マンガに限らず、ドラマや映画といったフィクションにおいて、女子トイレの鏡の前で、女性二人がメイク直しをしつつ話をする、というシーンがよくある。割とエゲツない話をする。

女の裏の顔を表現する、典型的な描写であるが、現実では――少なくとも、特に女性社員の多いミサの会社では、遭遇したことはなかった。

女子トイレなんて、まさしく今の自分のように、誰が聞いているかしれない。あまりにもリスキーだ。

今やメッセージアプリのグループチャットという、無音で隔離された場所があるのに、人間ならば必ずやってくる場所で、一部の人にしか見せるべきではない裏の顔を見せるなんて、無用心極まりない。

だから彼女たちがいかなる切片を垣間見せてこようとも、それは快不快に関係のないものであるはずだった。

今はマンガではなく現実だった。

しかし、まさにアタックをかまそうとしていた激しい鼓動と火照りが収まらないうちは出ていくことができないミサは、座っていても精神的棒立ちで会話を聞いているしかなかった。

「んー?」
「……おとついかな、アキラくん見たんだー。会社の帰り」
「えー、いいなー。ラッキーじゃん」
「ラッキーじゃないよ。カノジョと歩いてたもん」

ギクリとなる。
バレた! ──とは思わなかった。
おとつい?

「えー、カノジョいたんだー。ってか、ここ来てるとき、『いません』つってたじゃん」
「いや、よく考えてみ? そりゃいるだろー、あんだけの見た目だったら」
「やっば、アキラロスだわ」
「でもまー、アキラくんにふさわしい、カワイイ子だったよ。ちっちゃめで、目クリクリしてて、なんか、いいとこのお嬢様って感じ? F大付属の制服ってあんなだったっけな……まあ、同じガッコぽかったよ」

一昨日は、ジャケットにアンクルパンツでした。

「ちっちゃい」という形容詞は、用いられたことがありません。

卒業以後、学生に間違えられたことも、ありません。

「どこで?」
「渋谷。F大付属って近くじゃん」

一昨日は、会社帰りに銀座で首輪を買っていました──
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