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明治鬼恋慕
第11章 夜叉

「──…お前……鬼ではないな?」
「……」
「ククっ……ク、見事に騙されたものよ…。よもや鬼よりさらに稀少な生き物が、この街に紛れ込んでいようとはなぁ」
べらべらと喋りだした又左衛門の前で、焔来は無言である。
その沈黙は──つまりは男の言葉の肯定だった。
「さすがの私とて " 夜叉 " を見抜く目は持ちあわせておらん」
「──…」
「 " できそこない " のお前ならば狂骸湯をもってしても死には至るまいな…。ふん、それをわかって、お前は自ら飲んだのだろう」
「…っ…ハァ」
「卑怯者め」
「……!! 卑怯なのはどっちだ!」
できそこない、と
そう呼ばれた焔来の眉が動き、怒りをこめて歪んだ顔が殺意を表す。
大声で言い返した焔来の手が勢いで僅かに動き、食い込んだ刃が男の首から血を滲ました。

