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PM2時〜パッカー車の恋人〜
第30章 PM2時の君

最後のPM2時は、あっと言うまにやってきた。
店のバックヤードに、車をバックで入れる時、いつもはすごく気持ちがあがっているのに、今日は車を入れるのがすごく辛い。
誰もいないシャッターの閉まったバックヤードが、やたら寂しく見えた。
車から出て、ダンボールを回収しているといつものように、ドアが開いて、サラが笑顔で俺に挨拶した。
「お兄さん、こんにちは!」
お兄さん…。
そう、店で会う時はサラはいつも俺をお兄さんと呼ぶ。
初めてサラに、お兄さんと呼ばれた日を思い出してしまって、俺の胸がギュッと締め付けられた。
「お兄さん、私今日が最後なんです。今まで楽しい時間をありがとう。これからも、お仕事頑張ってくださいね。」
最後なのに…。
サラの後ろから出て来て、側の喫煙所で喫煙している従業員に怒りさえ覚える。
サラを抱き締めたい。
この場所で最後にちゃんと、サラを抱き締めたい!
「サ…!」
サラ!そう呼ぼうとした俺の唇をサラが持っていた小さなダンボールでふさいで、笑顔を見せながら、小さく首を振った。
「星野さんも、頑張って。」
「お兄さんも。」
そう言ってお互いに差し出した手。
握ったサラの手は震えていた。
サラ…。
結局、この場所では最後まで俺と君が愛し合っているなんて、誰も知らないまま、秘密の関係のままだったね。
PM2時のこの光景は、二人だけの秘密の時間。
君に会えて、君に恋したこの時間この場所は、いつまでも二人だけの思い出の時間になるんだね。

