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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第22章 "罠"


島原ー



「高杉はん、お久しゅう」

遊郭の一室…


高杉が数人の浪士を連れて、久々に月詠の所を訪れていた…
月詠の他、数人の遊女達が客達の相手をしている。

月詠は勿論主賓である高杉の側に座り、お酌をしているが…


「ほんまに、うち忘れられたん思ぅたわ‥」

「すまねぇな、色々立て込んでてよぉ、まっ俺もお前の顔が見たかったぜ」

月詠の肩を抱き、ニヤリと笑い酒を煽る…

月詠はそんな高杉に妖艶にしだれ掛かり、空になった杯にお酒を注ぎ足す…

遊廓ならば、ごくごく普通の光景だ。


「そう言えば高杉はん、今日はうちが知らない方がおりますなぁ」

席の端の方に男が一人‥
長い黒髪を一つに束ね、その顔立ちは美しく妖艶、決して女には見えないが、怪しい雰囲気を何処か持ち合わせている。


「気になるか?
俺意外に惚れるなよ」

「いややわ‥
うち高杉はんしか目に入っておまへん、ただ少ぉし気になっただけどすぅ」

さり気なく高杉を立て、相手の人なりを見たいと思う月詠‥今後の為にも……


「そうか…おい淡崎!!」

淡崎と呼ばれた男が、ゆっくりと立ち上がり此方へとやって来た…

「お初どすぅ、うち月詠言います、よろしゅうに…」

月詠は男に向かって微笑み掛ける。

「お噂はかねがね…
俺は淡崎星四郎と言います」

そう言い月詠に軽く笑
い返して来る。


「淡崎はんやな‥高杉はんお酌良いどすか?」

「あぁ、構わないぜ」

月詠は新しい杯を淡崎に渡しお酌をする。

「では頂きます」

杯の酒を一気に煽り、そして杯を一度振り月詠に差し出した。

「あなたも一杯如何ですか?」

やはり軽く笑いながら、杯を差し出している…

「へぇ、頂きますぇ」

杯を受け取り淡崎からお酌をして貰う、瞬間‥月詠の杯に薬を入れながら……

月詠はゆっくりと杯に口に付ける…


(…薬!?
この男……)


直ぐに気づいたが、此処で騒ぎを起こすのは不味い、月詠は何事も無い様に呑み進めていく…

「月詠さんも良い呑みっぷりですね、さぁもう一献」

淡崎は更に酒を進めて来る…


(媚薬…
いや違う阿片とかの麻薬の一種か…)


何故遊女の自分を狙う?

高杉か、あるいは新撰組か…

とりあえず薬が効いている振りをしなければならないだろう…

其処で月詠は、ワザと隙を作ってやる事にしてみた…
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