この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第28章 第十一話 【螢ヶ原】 其の四

この頃、お彩は、伊勢次の様子が妙なことに気付いていた。いや、上辺は、お彩がよく知る伊勢次と何一つ変わらないのだけれど、時折、ふっと遠い眼であらぬ方を見ているようなときがあるのだ。後に、お彩は、このことを何故もっと深く考えなかったのかと、いかほど後悔したかしれなかった。
そして、その十日後、九月に入ったばかりの朝のことであった。
暁方めざめたお彩は、隣の伊勢次の布団がもぬけの殻なのに気付いた。外の厠にでも行ったのかと思ったけれど、一向に戻ってこない。流石に不安に思って、家の中(といっても、二間あるだけの平屋なので、探すほどの手間も要らなかった)から庭に出て探したが、伊勢次の姿は見当たらなかった。
そして、その十日後、九月に入ったばかりの朝のことであった。
暁方めざめたお彩は、隣の伊勢次の布団がもぬけの殻なのに気付いた。外の厠にでも行ったのかと思ったけれど、一向に戻ってこない。流石に不安に思って、家の中(といっても、二間あるだけの平屋なので、探すほどの手間も要らなかった)から庭に出て探したが、伊勢次の姿は見当たらなかった。

