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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)

美麗に成長する隣国王子ふたりに対して、大公の養子にしかすぎない庶民生まれの俺の強みがあるとすれば、ただひとつ――。
姫がハルさん達に薔薇園の存在を明かさないことだった。
姫が薔薇園に赴くときは、ふたりがいない時に、必ず俺だけを誘うんだ。
俺を魅了し続けるあの笑顔を、ぱぁっと弾けさせて。
どうして俺だけをそこに連れようとするのか。
どうして他には教えないのか。
色々聞きたいことはあるけれど、姫が俺に微笑んでくれるのなら、俺の悩みなどちっぽけなものに思えてきて。
疑問を問いただす暇に少しでも姫と過ごしたい俺は、不安愁訴を心に抱えたまま、笑顔で流れる幸せな時間に酔い痴れていた。
薔薇園は、俺と姫だけの秘密の場所。
ここをって誘われる俺だけが、姫の特別の存在であるのだと自惚れることができる。
ここを、ここの思い出を……、誰にも荒されるわけにはいかなかった。
……たとえハルさんやナツにも。
ああ、公然と、姫は俺だけのものだと言えたのなら。
だがそれが言えない俺は、その"時"が来るのをひたすら待った。
姫と結婚しろと命じられる……その時を、ひたすらに。
俺の意志ではなく、周りが決めたことだから従わないといけないんだと、卑怯な俺はすべてを他人のせいにして、姫も兄弟との友情も双方手に入れようとしていたんだ。
だが――。
その"時"が来る前に、ハルさんは行動に出たんだ。
いつもとは違う、きっちりとした隣国の正装姿にて颯爽として現れ、国王に傅(かしず)いて言った。
シズル姫を正式に妻に迎えたいと。

