この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)

姫とは違う意味でハルさんが好きなのに、姫とふたり並ばれるのが辛くて、見守る笑顔が強張ってく。
皆と仲良くしたいのに、ハルさんが姫に執着して、姫もなんだかんだとハルさんに懐いているのが気になりすぎて。
ハルさんは見る度に精悍になってくる。
姫は見る度に美しい女性になっていく。
ナツは、さらに仰天するほど美麗に変化して。
その中で俺はいまだ、姫の許婚という身分を誰にも言えず、実際結婚の舞台が整ったり進んでいたりするわけでもなく。
いまだただの家庭教師をしているだけで、姫との時間は昔と同じまま。
俺は、ハルさんもナツも好きで。
孤独な世界を拡げてくれたこの兄弟王子に本当に心から感謝しているのに、俺はシズル姫と将来結婚することを諦められない。
こんなに姫を求めているふたりの前で、俺は姫を自分のものにしたい気持ちを捨てられない。
そんな裏切り行為にも似た未来が来ると思えば、その葛藤に胸が苦しくなり、同時にそんな自分が優位なのだと見せつけたい…どろどろとした汚い部分が見えてきて、俺という存在に反吐が出そうになる。
ハルさんは野性的でまぶしくて。
俺は内向的で陰湿で。
あまりのギャップに、俺は毎日憂えて。
姫の夫でいいのかと迷いながら、他の男を夫にさせたくない気持ちの方に、大きく揺れ動く。
そんな俺の葛藤を、ナツは早々に見抜いた。
――サクラも、しーちゃん好きなの?
ナツはおっとりしているけれど、内面は繊細で色々考えている奴だ。頭がいい。そして誰よりも俺を理解しようとしてくれているのだから、わかられて当然といえば当然だった。
だから俺は、ナツに、俺は姫の婚約者だということを告げたんだ。
……どこかで、それがハルさんにも伝わり、ふたりとも姫を諦めてくれればいいなと思いながら。
だが、ナツはハルさんには言わなかった……。

