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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第33章 浜辺の約束
 耳許で囁くと、千草は厭々をするように小さくかぶりを振った。
「北条家は代々執権を務めるお家柄、私の家はたまたま母が大御所さまの信任厚く、頼嗣さまの乳母を命じられたにすぎませぬ。たとえ今は力を持っていても、所詮はそれだけのことです」
 頼嗣は真摯な声で問うた。
「私はそのようなことを訊ねているのではない。千草はあの日の約束を憶えてはいないのかと訊いておる」
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