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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第29章 《巻の壱―すれちがい―》
 同じ問いを繰り返されても、泉水はうつむいたままで、口を開こうとしない。涙が今にも溢れそうなのを、懸命に耐えていた。
「何度、同じことを言わせる気だ? そなたはいつから黙(だんま)りになった?」
 泰雅の眉がつり上がり、眉間に青筋が浮かぶ。以前なら、けして見せたことのない表情だ。
 泉水は小さく息を吸い込み、口を開こうとする。その途端に、また、涙の雫が零れ落ちた。
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