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目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美
 

 そう堅く心に決めながら、いまだ地獄の拷問椅子を堪能する、脅威のおばちゃん達を怯えながら見ていた。


 あたしは、まだあのおばちゃんの域に達していないらしい。

 達したら、ああなるんだろうか。


 おばちゃん達はぶるぶる揺らされながら、機械音に負けじと大声で話している。


「知っている? さっきここの更衣室から救急車で運ばれたの、若い女性5人だって」


 ああ、あたしのノーパン回復を阻んだ、不届きな事態。

 5人もなんて結構大がかりな救急事態だったらしい。


「えええ!? なんでまた突然……感染菌とか?」

「わからないわ。とにかく身体が痙攣していたようなんだけれど、ここでの話……、全員の下半身が裸だったんですって。そして」


 そして?


 聞き耳立てているあたしの耳が大きくなる。


「あの長椅子でセックスしていた名残があるんですって」


 あたしに視線が向く。

 長椅子は、あたしが座っているところにしかない代物だった。


 ここ、ここで!?


 淫猥な道具に触れている気がしたあたしは思わず飛び退いた。


「長椅子だけではないわ、あのチェアでもあの床でも」


 "あのチェア"とは、あたしに責め苦を与えた椅子。

 "あの床"とは、今あたしが立ち尽くしている床。


 どこに逃げても、おばちゃん達の視線に追われる。

 あたしが移動する処すべて、他人の生々しい性事情に触れているらしい。

  
 これは、おばちゃん達の淫魔攻撃なんだろうか。

 あたしがなにかしましたか?


 おばちゃん恐いよ、恐いよ。


 怒れるキングコングを相手に出来るほどの怪獣「OBACHAN」を思い浮かべて、またもやぶるぶると身体を震わせていたら、おばちゃん達の会話が再開された。
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