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氷の華~恋は駆け落ちから始まって~
第5章 彷徨(さまよ)う二つの心
「そうか?」
しばらく間があった。トンジュは人差し指で巾着に咲いた白梅をなぞっている。
「その梅ね。家の前にある梅の樹を思い出して作ったのよ」
初めてここに連れてこられた日、絶望に覆われていたサヨンの心を慰めてくれたのが、あの白い梅の花であった。早咲きだったため、もう既に花は散ってしまったけれど。
返事がなかったので、サヨンは顔を上げ、トンジュを見た。と、こちらをじいっと見つめる彼の視線と視線がぶつかった。