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氷の華~恋は駆け落ちから始まって~
第5章 彷徨(さまよ)う二つの心
 夕飯をいつもより早く終え、サヨンは部屋の隅で針を動かしていた。先に繕い物を済ませて、今は気散じに刺繍をしている。
 三月の初め、トンジュは町に薬草を売りにいった。そのときに知り合いの絹店の主人から、半端物の絹布を格安で譲って貰ってきたのだ。頼んでいた刺繍道具もちゃんと買ってきてくれた。
―こんな小さな端切れでは到底、服なんて縫えないだろうが、袋でも何か縫って使うと良い。
 そう言って渡してくれたのだ。
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