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姉枕
第1章 東京……十八歳
 僕と姉さんだって、周りから見ればカップルに見えるのかな、と思うと、なんだか気恥ずかしい。あらためて並んでいるカップルを見ると、そのほとんどは男のほうが背も高い。僕も姉さんより背が高い。こうやって真横に立って並んでいると、ちょうど姉さんの頭が僕の胸板あたりにある。僕が姉さんの身長を超えたのは確か中二のときだった。姉さんのほうがそのことに気づいて、「うわ、抜かれた」と背伸びして、僕の頭のてっぺんに手を伸ばそうとしてきた。その光景をいまも鮮明に覚えている。
 あのとき、姉さんは純粋に嬉しそうだったけど、僕は少し違ったのだ。上目遣いで姉さんに見つめられて、戸惑っていた。それは、姉さんなのに、可愛い妹が出来たような感覚。か弱いものを守ってあげなきゃ、という男に備わっているもともとの本能が、姉さんに対して芽生えた瞬間でもあった。
 とはいえ、お化け屋敷が怖いことに変わりはなかった。
 徐々に前の人が進み、僕たちの順番が迫ってくる。中の様子は当然見えないけど、女の子の悲鳴は聞こえてくる。
 どれだけの恐怖があの中で待ち受けているのかと思うと、僕は自然と無表情になってしまう。お化け屋敷は、廃墟となった写真スタジオを回るというコンセプトで、
「なんかね、この中に心霊写真が沢山飾ってあるんやって。で、いろんな謎も隠されているから、それを解いていく話みたい」
 のんきにパンフレットを読みながら、姉さんがいちいち説明をしてくる。そうしながらも、僕の表情をうかがって、ニヤニヤしていた。まったく、こういうところは昔と変わっていない。いよいよ僕たちの順番が回ってきた。
「はるが、先頭ね」
 姉さんは入り口のところに来るや、僕の背中に隠れるように回った。
「わ、わかってるよ」
 正直、入る前から足は震えていた。それでもいまさら後には引けず、姉さんに背中を押されるように、お化け屋敷に足を踏み入れた。だけど一歩入ったところで、僕は完全に身が竦んでしまった。まったく見えないのだ。パンフレットに載っていたお化け屋敷の写真はだいぶ明るかったのに、実際は真っ暗で、それこそ自分の足元すら見えない。
「え? 怖い……」
 背中越しに姉さんが呟いた。長年ずっと一緒にいたから、僕はわかる。これは姉さんも本気で恐怖を感じている。
「どうしよ。何も見えない……」
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