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父に刻印された身体
第6章 泡の向こうの境界線
視線の先で、父が無言のまま棚から私のトリートメントを手に取り、手のひらに出していた。
普段なら自分で手早く馴染ませてしまう作業も、今の私には父の手を受け入れるしか選択肢がない。
父は慣れない手つきでこってりとしたクリームを取り分け、まるで壊れ物に触れるような躊躇いとともに、私の濡れた髪へと触れてきた。
指の腹で毛束をそっとすくい上げ、ぎこちない手つきで毛先へとなじませていく。最初はおそるおそる探るようだったその動きが、髪の水分と混ざり合うにつれて、徐々に滑らかなものへと変化していく。
ぬめりのある滑らかなトリートメントが毛髪をコーティングし、父の指先にぬるりと絡みついていく感覚が頭皮からダイレクトに伝わってきた。その濃密でぬめり気のある柔らかさが、肌の表面を甘くくすぐり、頭皮から背骨を伝って全身へとじわじわ染み渡っていく。
きしみの消えた髪は、父の指の動きに従順に沿っていく。絡まりが解けて滑らかになるたびに、私の全身を強張らせていた強がりや緊張までもが、ふわりと蕩けるように解けていくようだった。
トリートメントの濃密で甘い香りがふんわりと立ち上り、熱い湯気と混ざり合って、狭い浴室の空気を密やかに満たしていく。
片手では絶対に味わえなかった贅沢な感触が、お父さんの手を介して初めて身体中に蘇る。父に身を委ねることへの背徳的な躊躇いは残っているものの、今の私はただ、この痺れるような心地よさに浸っていたかった。
父の手が髪の表面を滑るたび、頭の深部が蕩けていくようで、私は甘やかな溜め息とともにそっと目蓋を閉じる。
充満する湯気の中で感じる父の男らしい気配と、髪を通じて肌に伝わる確かな体温。指先が毛先へとすべり抜けるたび、肌に残る熱がゆっくりと体内に溶けていくようだった。
指通りが滑らかになるにつれて、父の指先を硬くしていた躊躇いが、ゆっくりと溶けてほどけていくのが肌の感触で分かった。肩甲骨を越えて背中に垂れる私の髪を、父の太い指が深く絡め取るようにして、ゆっくりと何度もとかしていく。トリートメントの重みを含んだ黒髪は、まるで上質な絹糸のように父の指の間をすべり抜け、その滑らかな手触りを惜しむかのように、父は何度も、吸い寄せられるように手ぐしを繰り返していた。
普段なら自分で手早く馴染ませてしまう作業も、今の私には父の手を受け入れるしか選択肢がない。
父は慣れない手つきでこってりとしたクリームを取り分け、まるで壊れ物に触れるような躊躇いとともに、私の濡れた髪へと触れてきた。
指の腹で毛束をそっとすくい上げ、ぎこちない手つきで毛先へとなじませていく。最初はおそるおそる探るようだったその動きが、髪の水分と混ざり合うにつれて、徐々に滑らかなものへと変化していく。
ぬめりのある滑らかなトリートメントが毛髪をコーティングし、父の指先にぬるりと絡みついていく感覚が頭皮からダイレクトに伝わってきた。その濃密でぬめり気のある柔らかさが、肌の表面を甘くくすぐり、頭皮から背骨を伝って全身へとじわじわ染み渡っていく。
きしみの消えた髪は、父の指の動きに従順に沿っていく。絡まりが解けて滑らかになるたびに、私の全身を強張らせていた強がりや緊張までもが、ふわりと蕩けるように解けていくようだった。
トリートメントの濃密で甘い香りがふんわりと立ち上り、熱い湯気と混ざり合って、狭い浴室の空気を密やかに満たしていく。
片手では絶対に味わえなかった贅沢な感触が、お父さんの手を介して初めて身体中に蘇る。父に身を委ねることへの背徳的な躊躇いは残っているものの、今の私はただ、この痺れるような心地よさに浸っていたかった。
父の手が髪の表面を滑るたび、頭の深部が蕩けていくようで、私は甘やかな溜め息とともにそっと目蓋を閉じる。
充満する湯気の中で感じる父の男らしい気配と、髪を通じて肌に伝わる確かな体温。指先が毛先へとすべり抜けるたび、肌に残る熱がゆっくりと体内に溶けていくようだった。
指通りが滑らかになるにつれて、父の指先を硬くしていた躊躇いが、ゆっくりと溶けてほどけていくのが肌の感触で分かった。肩甲骨を越えて背中に垂れる私の髪を、父の太い指が深く絡め取るようにして、ゆっくりと何度もとかしていく。トリートメントの重みを含んだ黒髪は、まるで上質な絹糸のように父の指の間をすべり抜け、その滑らかな手触りを惜しむかのように、父は何度も、吸い寄せられるように手ぐしを繰り返していた。

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