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父に刻印された身体
第6章 泡の向こうの境界線
浴室に入り、シャワーの温水で身体に浮かぶ薄汗を軽く流す。
それから私は、父がやってくるのをただ待つことしかできなかった。濡れたタイルの上でじっと佇むその一秒一秒が、気が遠くなるほど長く感じられる。
白く濃い湯気がゆらゆらと壁を伝い、不揃いな水滴の弾ける音だけが不自然なほど静かな空間に反響していた。湯気と水蒸気に晒された自分の無防備な裸身が妙に生々しく浮き彫りになっている気がして、私はたまらず右腕を伸ばし、かばうように胸元を強く抱きしめた。
自分から誘うように頼んだのだ。そんなことは嫌というほどわかっている。わかってはいるのに、薄い浴室ドアのすぐ向こうに父の気配を感じ取るたび、心臓が肋骨を裏側から叩くような猛烈なテンポで鳴り響いた。
喉の奥を焼くような強烈な羞恥の波が押し寄せてきて、今すぐにでも扉を蹴開けて逃げ出したい衝動に駆られる。けれど、昨夜あの暗がりで味わった不快感と、ひとりで髪すら洗えない惨めさを思い出すと、ここで引き下がるわけにはいかなかった。
この羞恥すらも、お父さんを掠め取るための代償なのだから。
「いいか?」
ドア越しに、どこか喉を詰まらせたような父の声が落ちてくる。
お父さんにすべてを委ねるのだと、固く覚悟を決めたはずだった。
扉の向こうで擦れるようなかすかな衣擦れと気配が揺れ、私は条件反射のように肩をすくめた。もう、絶対に逃げられない。
「……うん。お願い、します」
熱い湯気のせいにして、かすかに震える声で呟く。
それから私は、父がやってくるのをただ待つことしかできなかった。濡れたタイルの上でじっと佇むその一秒一秒が、気が遠くなるほど長く感じられる。
白く濃い湯気がゆらゆらと壁を伝い、不揃いな水滴の弾ける音だけが不自然なほど静かな空間に反響していた。湯気と水蒸気に晒された自分の無防備な裸身が妙に生々しく浮き彫りになっている気がして、私はたまらず右腕を伸ばし、かばうように胸元を強く抱きしめた。
自分から誘うように頼んだのだ。そんなことは嫌というほどわかっている。わかってはいるのに、薄い浴室ドアのすぐ向こうに父の気配を感じ取るたび、心臓が肋骨を裏側から叩くような猛烈なテンポで鳴り響いた。
喉の奥を焼くような強烈な羞恥の波が押し寄せてきて、今すぐにでも扉を蹴開けて逃げ出したい衝動に駆られる。けれど、昨夜あの暗がりで味わった不快感と、ひとりで髪すら洗えない惨めさを思い出すと、ここで引き下がるわけにはいかなかった。
この羞恥すらも、お父さんを掠め取るための代償なのだから。
「いいか?」
ドア越しに、どこか喉を詰まらせたような父の声が落ちてくる。
お父さんにすべてを委ねるのだと、固く覚悟を決めたはずだった。
扉の向こうで擦れるようなかすかな衣擦れと気配が揺れ、私は条件反射のように肩をすくめた。もう、絶対に逃げられない。
「……うん。お願い、します」
熱い湯気のせいにして、かすかに震える声で呟く。

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