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月曜日の処方箋
第1章 夕暮れと白衣
「お腹が痛いんだね」

加藤は穏やかなトーンでそう返すと、ベッドの脇の椅子にそっと腰掛け、落ち着いた声で問いかけた。

「生理痛? それとも、お腹を下してる感じかな?」

「……生理痛、です……」

ベッドの上で、陽菜は小さく首を横に振った。

「そっか。他に、何か症状はある? お腹が重いだけじゃなくて、頭が痛くなったり、熱っぽかったり、気分が落ち込んだりとか……そういうのもあったりする?」

「……頭も、痛いです。それに、なんか……すごくイライラしたり、急に涙が出たりして……。気分も、すごく落ち込みます……」

途切れ途切れではあったけれど、陽菜は自分が毎月抱えている苦しさを、初めて言葉にして吐き出した。
加藤は相槌を打ちながらしっかりと耳を傾ける。

「じゃあ、今日はまずこれを飲んで。……あ、飲む前に、何か少しお腹に入れておいたほうがいいかな。何か食べた?」

首を横に振る陽菜を見て、男性は「少し待っててね」と声をかけると、奥の控え室のほうへと引っ込んだ。
数分後、戻ってきた手には、小さな紙コップに入った白湯と一緒に、ひと包みの薬が乗せられていた。

「これね、ロキソニンっていう痛み止め。空きっ腹で飲むと胃に優しくないから、さっきお湯と一緒に一口、クッキーでもつまんでから飲んでごらん」

「……はい」

手渡されたのは、錠剤が一つ入ったシートだった。
男性は優しく微笑むと、少し申し訳なさそうに眉を下げた。

「今日はもう時間も遅いし、外もすっかり暗くなっちゃったからね。今日はこのお薬を飲んで、今夜はしっかり体を休めなさい」

「……はい」

「明日……無理のない時間でいいから、もう一度診療時間内にここへ来てくれる? そのとき、改めてちゃんとこれからの話をしよう」

名前もまだ知らない、突然倒れ込んだだけの高校生の自分に、ここまで親身になってくれる。
その優しさが嬉しくて、胸の奥がギュッと締め付けられた。

「……明日、来ます。……ありがとうございました……」

陽菜が両手で薬を受け取ると、加藤は安心したようにふっと目を細めた。

「うん、待ってるよ。気をつけて帰るんだよ」

その温かい見送りを受けながら、陽菜は静まり返った診察室を後にした。
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