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如月茜(きさらぎ あかね)
第5章 第5話:聖夜の検品、あるいは極北の晩餐
昨夜、あれほどの熱量で「献品」を誓い合ったものの、一夜明けて現実がやってきた。
その日の夜、お風呂の時間が刻一刻と迫るにつれて、家の中には言い知らぬ異様な緊張感が立ち込めていた。
リビングのソファに座る如月茜は、いつものように涼しい顔で、しかしどこか慈愛に満ちた声で母親に声をかけた。
「恵麻さん、無理しなくていいんだよ? 今夜はまだ初日だし、心の準備ができてないなら――」
その言葉に、昨晩あんなにも大見得を切った母・恵麻は、引き返すこともできぬプレッシャーと、身の毛もよだつ羞恥心、そして奇妙な興奮の入り混じった坩堝(るつぼ)の中で、全身をブルブルと小刻みに震わせていた。
(い、いや、今さら引けるわけがない……! )
(昨日、あんなに『差出します』って言っちゃったし、茜さんの期待を裏切ったら、それこそ私……!)
顔を真っ赤に染め、瞳孔をわずかに見開きながら、恵麻は震える両手で自分のスカートの裾を掴んだ。
そして、今日1日――朝から晩まで彼女の身体の最もプライベートな熱を受け止め、歩き、動き、呼吸してきた「その布切れ」を、意を決してそっと脱ぎ取り、畳の上で丁寧に折りたたんだ。
「あ、あの……茜さん……」
震える声で呼びかけながら、恵麻はまるで尊い御神体でも捧げるかのように、両手でその「証拠品」を茜の差し出した手へとそっと預けた。
茜はそれを、申し訳なさそうに遠慮がちに受け取る……なんてことは、宇宙の片隅たりとも起きなかった。
彼は何の躊躇いもなくそれを両手で引き取ると、なんと、そのまま迷うことなく自分の鼻にググッとすり寄せ、ふんっ、と深くその匂いを吸い込んだのである。
「くんっ、くんっ」
(――……っ!?)
恵麻の脳内で、世界が真っ白に弾け飛んだ。
(えっ……? ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、待ってよ、それ……っ!!
)
その日の夜、お風呂の時間が刻一刻と迫るにつれて、家の中には言い知らぬ異様な緊張感が立ち込めていた。
リビングのソファに座る如月茜は、いつものように涼しい顔で、しかしどこか慈愛に満ちた声で母親に声をかけた。
「恵麻さん、無理しなくていいんだよ? 今夜はまだ初日だし、心の準備ができてないなら――」
その言葉に、昨晩あんなにも大見得を切った母・恵麻は、引き返すこともできぬプレッシャーと、身の毛もよだつ羞恥心、そして奇妙な興奮の入り混じった坩堝(るつぼ)の中で、全身をブルブルと小刻みに震わせていた。
(い、いや、今さら引けるわけがない……! )
(昨日、あんなに『差出します』って言っちゃったし、茜さんの期待を裏切ったら、それこそ私……!)
顔を真っ赤に染め、瞳孔をわずかに見開きながら、恵麻は震える両手で自分のスカートの裾を掴んだ。
そして、今日1日――朝から晩まで彼女の身体の最もプライベートな熱を受け止め、歩き、動き、呼吸してきた「その布切れ」を、意を決してそっと脱ぎ取り、畳の上で丁寧に折りたたんだ。
「あ、あの……茜さん……」
震える声で呼びかけながら、恵麻はまるで尊い御神体でも捧げるかのように、両手でその「証拠品」を茜の差し出した手へとそっと預けた。
茜はそれを、申し訳なさそうに遠慮がちに受け取る……なんてことは、宇宙の片隅たりとも起きなかった。
彼は何の躊躇いもなくそれを両手で引き取ると、なんと、そのまま迷うことなく自分の鼻にググッとすり寄せ、ふんっ、と深くその匂いを吸い込んだのである。
「くんっ、くんっ」
(――……っ!?)
恵麻の脳内で、世界が真っ白に弾け飛んだ。
(えっ……? ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、待ってよ、それ……っ!!
)

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