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如月茜(きさらぎ あかね)
第4章 第2話 新しい日常と穏やかな温もり
「……あの、茜さん」
静まり返ったリビングに、恵麻の掠れながらも芯のある声が響いた。 隣でノートを抱えたまま固まっていた美咲も、はっと息を呑んで母親の背中を見つめる。
茜は優雅に傾けていたコーヒーカップの動きを止め、ふっと穏やかな目を恵麻に向けた。
「どうしたの、恵麻さん?」
。 恵麻はぐっと息を飲み込むと、意を決して問いを投げかけた。
「もしかして……茜さん、今のって……忖度(そんたく)なんですか?」
その言葉に、茜はわずかに眉をひそめ、不思議そうな顔をして聞き返した。
「――忖度?」
「はい……」
恵麻は胸が締め付けられるような緊張感を覚えながらも、震える唇を必死に抑えて言葉を継いだ。
「私たちが……あなたに生活のすべてを助けてもらって、お世話になっている立場だから……その、私たちが逆らえないのを分かっていて……『パンツくらい見せろよ』っていう……そういう『忖度』から、その余裕が出てるんですか……?」
リビングの空気が、ピリリと張り詰める。 恵麻の問いを受けた茜は、一体どのような表情を浮かべるのか――。
茜は驚くような、それでいて心の底から愛おしむような、ふっと柔らかい笑みを浮かべた。
そして、コーヒーカップをそっとソーサーに置くと、すっと立ち上がり、驚きで固まっている恵麻と、その隣で息をのむ美咲のほうへ静かに歩み寄る。
茜は恵麻のすぐ目の前まで歩を進めると、そっとかがみ込み、母親の耳元に温かい声を囁いた。

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