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ドラゴンの潜む山
第1章 ドラゴンの潜む山
「ねえ、今度の日曜は晴れるかな? 一緒に山に探しにいこうよ、ドラゴン」
美桜が言った。
「ダメ、ほら」
穂乃果は壁にかけてあるカレンダーを指差した。新聞配達の人から貰ったものらしく、社名が入っている。
今週の金曜日から来週の木曜日までの七日間、バツ印が書いてあった。
「あ……」
「戻ってきたらね」
「でも冬になっちゃう。熊が冬眠する前は凶暴になるから、寒くなってきたら山に入っちゃダメって言われたんだよ」
「じゃあ冬が終わってあったかくなったら」
「熊が冬眠から覚めちゃう」
「じゃあ夏」
「熱中症になるし、夕立も来るからダメって」
「じゃあ」
「何か理由をつけて、いつもダメって言うんだよ、いつもいつもいつも」
だん、だん、と両手でテーブルを叩く美桜。まるでリズムを刻むように、一定間隔で叩き続ける。彼女の苛立ちが徐々に大きくなっているのがわかり、穂乃果はすぐに話題を変えた。
「ほら、いいから早くその絵仕上げなよ。もうすぐ夕飯できるんじゃない? わたしサツマイモ届けに来ただけだから、もう帰るよ。またね」
ぴたりと、美桜の動きが止まった。
「うん、ありがと。また明日」
そうしてにっこりと笑って手を振ってくる。すぐにまたドラゴンの絵を塗る作業に戻った。どうせもう、呼んでも声は届かない。美桜の異常なまでの集中力を穂乃果は何度も目《ま》の当たりにした。

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