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ドラゴンの潜む山
第1章 ドラゴンの潜む山

 穂乃果はわざとおどけてみせた。
 安は微かに笑った。

「ごめんね、ちゃんと挨拶に行こうと思ってたんだけど、急な引越しで荷造りが間に合わなくて」
「おばさん、呼んでくれたら手伝うのに」
「じゃあ、ほのちゃんの怪我が治ったら、手伝ってもらおうかな」

 絆創膏が貼られた膝や、ふくらはぎのガーゼをちらりと一瞥し、安が言う。

「もう平気だもん」
「……ごめんね、美桜のせいで、危険な目に遭わせてしまって」

 穂乃果は笑った。ばっと両手を広げ、声を張る。

「おばさん、ドラゴンちゃんと居たよ! バグってるわけじゃなかった、あたしにも見えたもん!」
「ドラゴン? ーーそう、それはよかった」

 柔らかな声だった。安の言葉や表情はいつだって母が娘を思うそれだ。

「あたし、病院にいる間に一個思いついたことがあって。なんだと思う?」
「うーん、なんだろう」

 穂乃果はにやっと笑って、安に耳打ちした。
 安は驚いたように、両目を大きく見開いた。

「美桜にも伝えて! これはね、あたしから美桜に送る、約束なの!」
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