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明君のお母さんと僕
第1章 西瓜
 コップにはストローがついていた。僕の家ではがぶ飲みが当たり前なので、それだけでも明君の家はお上品だなぁと思った。
「ありがとうございます……」
 僕は頭を下げてお礼を言う。喉がカラカラだったので、ストローに口をつけると、麦茶を勢いよく飲んだ。いや、一気に飲み干してしまった。
「ほんと、暑いもんね~。麦茶、もう一杯いれるね。あ、西瓜も冷やしてあるから、食べる?」
 僕の飲みっぷりを見て、明君のお母さんは嬉しそうに微笑んでいた。僕は恥ずかしくて、思わず「はい!」と裏返った声で返事をしていた。実際、西瓜は好きだった。
 だが、この西瓜がいけなかった。マズいわけではない。それどころか、血のように赤く、よく熟していて、齧れば、水気たっぷりの甘い汁が口の中に広がり、喉にもずっと甘さが残る。
「美味しい?」
 テーブルを挟んで、明君のお母さんが口元を動かしながら聞いてくる。明君のお母さんも西瓜を一緒に食べ始めたのだが、麦茶はストローで飲むくせに、西瓜は大口を開いて丸かじりするのが「明君の家流」のようで、明君のお母さんはお世辞にもお上品と言えないほど、西瓜を貪っているのだ。
 明君のお母さんが西瓜を齧るたび、ジュルッと汁が唇から滴る。さらに、長い黒髪が汚れないように、片手で髪をかきわけながら、お皿に顔を近づけると、西瓜の種をプッと吐き出す。
 お上品なお母さんと思っていただけに、その野性的な姿に僕は驚いてしまった。だけど、少年ながらも妙な色気を感じていた。きっと、これがギャップというやつだ。
さらに僕の目を奪うものがあった。明君のお母さんは西瓜の種を吐き出す時、上体を前に倒す。そのたび、ワンピースから覗く胸の谷間が僕の目の前に露わになるのだ。
 葡萄の房のような形をした白い乳房の上部が見えてしまっているのだ。
 今から思うと、あの時、明君のお母さんはノーブラだったのではないだろうか。シャワーを浴びている時に、玄関の呼び鈴が鳴った。最初は無視しようとしたものの、「明君」と呼ぶ声がしたため、息子の友達だと気づいて、慌てて出迎えてくれた。そうに違いない。
「明、遅いわね~」
 明君のお母さんは西瓜を半分ほど食べたところで、独り言のように呟いた。いら立っている様子ではなく、単純に帰りの遅い息子を心配しているような口ぶりだった。
「そうですね。遅いですね」
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