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美香・透明な婚姻
第7章 秘密の砂浜 〜二人の果実〜
「さあ、着いたぞ。ここが秘密の場所だ」

「ここはどこなの……?」

自分たち以外に誰もいない世界の果てのような景色に、私は奇妙な目眩を覚えながら尋ねた 。

「さっき通ってきた丸石の転がった沿岸があったやろ。あそこは昔、海女が貝を取っとた場所や。亡くなった祖母ちゃんが海女やったころ、ここによう連れてきてもろうたんよ。ほら、あそこに見えるのが海女小屋や」

彼の指差す砂浜の端に、小さなモルタル造りの小屋が、時の流れに取り残されたように寂しげに佇んでいた 。

「もう、海女さんたちはいないの?」

「ああ、もうかれこれ二十年くらい前には海女文化も廃れてしもうてな。今じゃここには誰も来んようになった」

「そうなの……」と呟き、私は再び海へ視線を戻した。ここの砂は、昨日見た海水浴場のものとは明らかに異なり、ほんのりと薄い黄色を帯びている。

よし兄は大きな岩陰にシルバーのレジャーシートを広げると、そこへどかっと腰を下ろした。肩から降ろしたクーラーボックスを開け、冷えたノンアルコールビールを取り出す 。

「美香さんも座りいや。ビール、飲むかい?」

促されるまま、私は彼のすぐ隣に腰を下ろした。ほい、と手渡された缶は、汗をかいてひんやりと冷たい。よし兄はビールを片手に、遠い目をして幼い頃の記憶をぽつりぽつりと語り始めた。私はその声に耳を傾けながら、冷たい液体を少しずつ喉に流し込む。

やがて語り尽くしたように、よし兄は黙り込んだ。波の音だけが心地よいBGMとして二人の間を流れていく 。

「ここは、誰も来ないから……」

その呟きとともに、彼の逞しい腕が私の腰へと回った。ぐっと引き寄せられ、おもむろに唇が重ねられる 。それはほんの、触れるだけの静かなキスだった。しかしそれこそが、あの甘美で官能的な時間が再び幕を開ける合図だった 。

互いの体温を確かめ合うような、悪戯で、どこか焦らすようなついばみ 。彼の指先が私のうなじを滑り、長い髪の芯へと深く絡みついていく 。逃げることを許さないような強い力で、もう一度、深く唇が重ねられた 。

「ん……っ」

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