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お題小説第9弾『蒼い夏』
第1章 蒼い望月
 4

「ねぇ…」
 ボクの肩に触れ…
 
「…」

「キスしたこと?」

「……」
 首を振る。

「ふぅん」
 グイっと肩を引かれ…

「…してみる?」
 艶やかな目で、囁く。

「う…」
 首を縦に頷くに決まっている…
 だって、悠里さんを…
 縁側で涼むその姿に昂ぶり、欲情し、慰めていたのだから。

 その魅惑的な美しさに、魅了され、見惚れていたのだから…

「…する?」
 囁く悠里さんの吐息が、顔にかかり…
 よく見ると額に、小さな汗が光っていた。

「…し、したい…です…」

「そう…」
 スッと、唇が触れてきた。

「あ…」

「しぃっ」
 悠里さんの舌先が、唇を割って入ってくる。

 あぁ、うぅ…
 ボクの心は、初めてのキスに震え、ときめく。

 ピチャ、ピチャ…
 その舌が、唾液が、甘い。

「ふぅぅ…」
 すると唇が、離れ…

「ねぇ…」

「……ちゃおうか?」

「え?」
 昂ぶりでよく聞こえなかった。

「全部…しちゃおうか?」

「え…」

「…したい?」
 その目はまた、茶目っ気いっぱいな輝きに変わっていた――

「は、はい……」
 断る理由なんてどこにもないし、あり得ない。

「…そう…じゃ、奥に行こう…」

 ボクは、奥に…
 寝室に誘われ、夢のような一夜を…
 蒼い月の光りに煌めく、美しい悠里さんを…
 いや、悠里さんに愛された――




「…………」

「ふぅぅ…」

 ボクと悠里さんは抱き合いながら、余韻に浸っていると…

「やっぱりさぁ…」

「え?」

「……てるんだねぇ…」

 その囁きの意味が分からない…

「え?」

「やっぱりさぁ…
 親子って似るんだねぇ…」

「え…」
 サァっと、冷や汗が流れる。

「浩ちゃんとさぁ…」
 父の名前。

「浩ちゃんに、よく似てるもん…」

「え…」

 悠里さんのその、茶目っ気の目の意味が、今、分かった――

「浩ちゃんの初めてもね…」

「……」

「わたしなの…」

 ボクは父が21歳の時の子供…
 だから悠里さんの推定年齢に違和感はない。

「ねぇ、浩ちゃんて、離婚して帰ってくるんでしょう?」

 カーテンの隙間から射す蒼い月明かりが、その微笑みを…
 妖艶に輝かせていた――

 蒼い月
 その煌めきに
 光る汗
 昂ぶるほどに
 萎む想い
         終わり


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