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背中のチャックを下ろす時…
第1章 背中のチャックを下ろす時…
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「え、あ…」
 
 結婚式の披露宴の後…
 カタチばかりと、二次会に少し顔を出して帰ってきたら…

「お帰り…」
 マンションのエントランスロビーに、彼が居た。

「え、なんで?」

「あ、いや、多分、今頃かなぁってさ…」

「え、まさか…」

「いや違うよ、ほら、多分………」
 彼曰く…

 ――会社の同期の結婚式ではあるけれど、それ程仲良くはないし、どちらかといえば義理で招待され…
 義理で参加した訳だから――

「だから、二次会も義理で少し顔を出して、帰ってくるんかなぁ…ってね」

「あ、う、うん…」
 正に、彼の読み通りであった――

「あ、でも…」

「はいはい、あの時、そう言ってたからぁ」

「え、あ、そうなの」

 あの時…
 それはまだ、一緒に住んでいた約三ヶ月前の頃。

「だから、そろそろ帰ってくるかなぁ…ってさ」

「…で、待ち伏せ?」

「あ、いや…」

「あ、ストーカー?…」

「い、いや、ち、違…う…」

「もう、わたしたちは別れましたよねぇ」

「あ、うん、はい…」

「で、たまたま…さ…」

「あ、うん…」

 そう、たまたまだ……

 たまたま、今日着るワンピースの、背中のチャックを閉められず…
 そのタイミングでのLINE…

『背中のチャックが閉められない…』

『行く』

「………それだけですよねぇ」

「あ、い、いや…」

「やっぱ、ストーカー…」

「あ、ち、違うって、あ、ほ、ほら…」

「………」

 わたしはジッと彼を見る…
 決して怒ってや、不快なわけではなく…

 ただの、フリ――

「あ、いや、ほら、チャックが閉められなかったから…」

「………」

「ほ、ほら、今度は、お、下ろせない……かなぁ…なんてさ……」

「………」



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