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影を背負った愛~足りない愛を、君に
第27章 父の日の前夜 ~夢の余韻(start-2day)~彩香編②
実家訪問から3週間後。

12月の神奈川は、夜になると冷たい海風が吹いていた。
健治さんと彩香は、マンションのベランダではなく、
近郊の静かな丘にある展望台へ車を走らせていた。

夜景が綺麗に見える場所を、健治さんが「少しドライブしよう」と誘った。

車を停め、夜の街並みを一望できるベンチに並んで座る。
彩香は健治さんのコートの中にすっぽりと入り、逞しい腕に包まれていた。

155cmの小さな体が、中年男のがっしりとした体躯にぴったりと寄り添う。

「寒くないか?」

「ううん……健治さんが温かいから」

彩香が上目遣いに見上げると、健治さんは深く刻まれた皺のある顔を優しく緩め、
口ひげの下で微笑んだ。

厚みのある胸板に彩香の頰が押しつけられる。

しばらく夜景を眺めたあと、健治さんは彩香の体を正面に向き直らせた。

大きな手で彩香の細い腰を抱き、黒縁メガネの奥の瞳を真っ直ぐに見つめた。

「彩香」

低い、渋みのある声が夜の静けさに響く。

「俺はもう、お前を離したくない。
逃げられたとき、心底怖かった。
お前がいない毎日は、仕事も、趣味も、すべて味気なかった」



彩香の心臓が早鐘のように鳴った。
健治さんはコートの内ポケットから、小さな黒い箱を取り出した。


中には、控えめながらも上品なダイヤモンドのリングが入っていた。
派手すぎず、彩香の地味めで純情な雰囲気に合うシンプルなデザイン。



「彩香……俺と結婚してくれ」




健治さんは片膝をつき、彩香の左手を自分の大きな手で包み込んだ。
逞しい指が、彩香の細い指にリングをゆっくりと滑り込ませる。



「俺のすべてでお前を守る。
甘えたいときは全力で甘えさせてやる。
怖いときは、俺が全部受け止める。
お前が一生、俺のそばで笑っていられるようにする。
……どうか、俺の妻になってくれ」
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