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キモおじ ~もう一つのエロ本を拾っただけなのに~
第1章 《崩壊した幻想》
──【2022年 12月】

12月に入り、街はクリスマスムード一色に染まっていた。
だが、優香の頭の中は、世間の浮かれた空気とは別のことで満たされていた。数日後に迫った18歳の誕生日と、「聡さん」との次のステップへの期待。
Xデーまで、あと数日。優香の心は、かつてないほど高揚していた。

夕方。公園の木枯らしは冷たかったが、優香の頬は熱を帯びていた。
いつものように、ベンチの裏に手紙を隠す。今日の文面には、もうすぐ大人になることへの期待と、彼にすべてを委ねる覚悟を綴った。
手紙を押し込み、公園の入り口まで歩いたところで、優香はふと足を止めた。

(あ、ちゃんと奥まで入れたかな……?)

今日は北風が強い。さっき隠した手紙が、もし風で飛ばされて誰かに拾われたら大変だ。優香は不安になり、確認するために足早に引き返した。
公園の入り口に戻り、ベンチの方を見る。
そこには、人影があった。

(えっ……?)

優香はとっさに木の陰に身を隠した。誰かがベンチに近づいている。
夕暮れの薄明かりの中、その人物のシルエットが浮かび上がる。
背はそれほど高くなく、ずんぐりとした体型。突き出た下腹。
男はベンチの裏に手を伸ばし、優香の手紙を抜き取った。そして、街灯の光の下でその封筒を愛おしそうに見つめ、にやぁっと歪んだ笑みを浮かべた。

(嘘……)

優香は自分の目を疑った。
そこに見えたのは、薄くなった頭頂部と、脂ぎってテカテカと光る肌を持つ、中年の男だった。どう贔屓目に見ても、冴えない「おじさん」だ。
男は、優香の手紙を顔に近づけ、深く息を吸い込むように匂いを嗅いだ。その下品でねっとりとした仕草に、優香の全身に鳥肌が立った。

(誰、あの人……? まさか)

優香が頭の中で大切に育て上げてきた「聡さん」のイメージ――若くて爽やかで、優しくて知的な王子様――が、音を立てて崩れ去っていく。
男は満足そうに手紙をポケットにしまうと、公園を出て、すぐ隣のマンションへ入っていった。
優香は吸い寄せられるように後を追った。心臓が痛いほど早鐘を打っている。
オートロックのないエントランスを抜け、エレベーターホールへ。男が乗り込んだエレベーターの表示階数は『9』で止まった。

優香は震える足で、集合ポストの前に立った。『905』のプレートを見る。
そこには、無機質なアルファベットが刻まれていた。
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