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愛と犠牲の果て~人妻を堕とす愛人契約~
第96章 夫婦の絆を奪う唇の蹂躙
「くくっ……やはりそう来るか。最愛の夫が見ていては恥じらいが邪魔をして、私と濃厚に貪り合うような口づけができない、というわけだな? だが、雄一の目がなくなれば、もう何も遠慮する必要はない。二人きりで、息もできないほど情熱的に、お互いのすべてを貪り尽くそうじゃないか。……夫を傷つけまいとするその健気な諦念が、かえって私をどれほど昂らせるか、明日の本番前に骨の髄まで叩き込んでやるよ」
鬼頭は満足げに唇を歪め、喉の奥で低く笑った。雄一は絶望に目を血走らせ、「澪……!」と叫びそうになったが、澪の「お願い、行って」という悲痛な眼差しに圧され、ただ拳を血が出るほど握り締めながら、這うようにして応接室から退室するしかなかった。パタン、と容赦なく閉まる扉。
廊下に放り出された雄一は、激情を抑えることができなかった。そのまま立ち去ることなどできるはずがない。雄一は周囲の目を盗み、応接室の扉にそっと耳を押し付けた。この応接室の扉は防音機能などなく、耳を付けると中の音がほぼ筒抜けの状態で、生々しい臨場感をもって外へと漏れ聞こえてしまうのだった。
室内では、鬼頭が立ち上がり、立ちすくんだままの澪の正面に位置すると、じっと澪の瞳を見つめるようにした。
「ではいただこうか、澪……」
 鬼頭の低く愉悦に満ちた声が、薄い扉の木目をじわじわと透かして、廊下で身動きもできずに立ち尽くしている雄一の鼓膜へと容赦なく突き刺さった。防音性のない無機質な扉は、室内の冷酷な空気を遮断することなく、むしろその悍ましい臨場感を何倍にも増幅させて外へと漏れ響かせる。
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